ICBのF1講座 #08

今までダウンフォースと空気抵抗について話してきましたが、それが実際のレース中にどう影響するかを少し話したいと思います。


基本的に直線では前のマシンの真後ろに位置取るのがいいとされているのは有名な話ですよね?
何故かというと、マシンの後ろのは「スリップストリーム」と呼ばれる空間が生じるからです。
最初の方の講座で、マシンの後ろに真空状態ができることはないから、そこに空気が流れ込むという話をしたと思いますが、いくら空気が流れ込むとは言え、周りよりも空気の量は少ない空間になります。
ということは、その空間内にいる限りは、それだけ空気抵抗が少なくなるんですね。


だから、スリップストリームに入るとスピードが伸びる
…というのは残念ながら間違いです。
タブン、こう勘違いしてる人がほとんどだと思います。
けど、よ〜く今までの話を思い出してくださいね。
空気が少ない部分を走行しているということは、それだけダウンフォースも減るということです。ダウンフォースが少なければマシンを路面に押さえつける力が小さくなるため、タイヤのパワーが路面に伝わりにくくなります。


では何故スリップストリームにつくのが良いのか?
ダウンフォースが減ることによって、垂直抗力が減り、タイヤと路面との摩擦力も減ります。
ということは、タイヤを同じ速さで回転させるために必要な力は少なくなり、それだけエンジンに負荷がかからなくなります。
つまり、スリップストリームに入る前よりもタイヤを強い力で回転させることができます。しかし、その力は路面には伝わらないためこの時点ではマシンのスピードが上がることはほとんどありません。


このようにタイヤが本来の力よりも大きい力で回転している状態でスリップストリームから出るとどうなるでしょう?
空気の量が元に戻りますんで、ダウンフォースも普段通り働きます。
するとタイヤの力が一気に路面に伝わり、マシンは急加速します。
スリップストリームに入るとスピードが伸びる」のではなく「スリップストリームから出るとスピードが伸びる」のです。


やはり、直線を走る時でもダウンフォースは必要だということがよくわかると思います。